心房頻拍とは?

心房頻拍(atrial tachycardia)

心房頻拍
文献1より 心房頻拍

心房頻拍は心房内の洞結節以外の場所で興奮が発生し、頻拍となっている状態です。機序としては異常自動能リエントリーがあります。

心房頻拍(atrial tachycardia)

心房に由来する頻拍を広義の心房頻拍、心房の1点から興奮が発生する巣状心房頻拍(focal AT)を狭義の心房頻拍とする考え方もあります。この場合は広義の心房頻拍には心房細動心房粗動も含まれます。

心房頻拍(atrial tachycardia)

心電図所見

心房頻拍の心電図の特徴は以下の通りです。

・心拍数100/分以上の頻拍

・洞調律時と同じQRS波

・洞調律時と異なるP波
心房頻拍(atrial tachycardia)

房室結節を通って心室に興奮が伝わるのでQRS波はnarrowになります。心房は一定の間隔で興奮するためリズムは整になります。

心房頻拍(atrial tachycardia)

狭義の心房頻拍である巣状心房頻拍に関しては、心房細動や心房粗動と異なり基線が見られるのが特徴です。これはマイクロリエントリー(心房細動)やマクロリエントリー(心房粗動)のように常に心房のどこかが興奮している状態と異なり、心房が興奮していない時間が存在するためです。

心房頻拍(atrial tachycardia)

心房頻拍の起源が洞結節の近くの場合、P’波は洞調律のP波とほとんど同じ波形となることで見分けがつかないことがあり、心電図波形のみでは判断が困難なことがあります。

心房頻拍(atrial tachycardia)

心房に複数の興奮起源がある場合、様々なP’波を認め多源性心房頻拍と呼ばれます。

心房頻拍(atrial tachycardia)

narrow QRS tachycardiaとの鑑別

心房頻拍はnarrow QRS tachycardiaの一つであり、他の頻拍との鑑別が必要になります。

P波

心房頻拍ではP波はRR間隔の後半に存在しておりlong RP頻拍と呼ばれます。P波の形は洞調律のP波とは異なります。

心房頻拍(atrial tachycardia)

停止様式

ATP

ATPを投与すると房室結節の伝導が一時的にブロックされます。しかし、心房頻拍では心房の興奮自体は持続しているためP波は頻拍の周期で持続します。房室ブロックによりQRS波は見られなくなりますが基本的にATP投与では心房頻拍は停止しません。例外として少量のATP投与で頻拍が停止するATP感受性心房頻拍があります。

心房頻拍(atrial tachycardia)

自然停止

心房頻拍が自然に停止する場合、心房の興奮が停止するので、直前の心房の興奮は心室に伝導しているため、最後はQRS波で終わります。

心房頻拍(atrial tachycardia)

参考文献

1)Focal Atrial Tachycardia Originating From the Right Atrial Appendage Masquerading as Inappropriate Sinus Tachycardia. JACC Case Rep. 2021 Sep 1;3(11):1379-1381. 

書籍

今さら聞けない心電図 P172-173

心電図マイスターによる3→1級を目指す鑑別力grade up演習 P77-78

わかる!読める!心電図ガイド症例解説Q&A P52-57

心電図マイスターを目指す基礎力grade up講座 P70-73

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