fQRS(fragmented QRS)
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fQRSのfはfragmentedの頭文字になります。fragmentは「粉砕する、割る」という意味のラテン語が語源となっています。
fragmented QRSは日本語では「多棘性QRS」、「分裂様QRS」、「断片化QRS」などと表現され、「割れたQRS」と呼ばれることもあります。
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心電図は文字通りQRSが “割れて断片化した” 様なギザギザした波形に見えます。
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fragmented QRSは広い意味ではrSr’波やRSR’波を含んでいます。
心筋のダメージ
fQRSは心筋の瘢痕による心室の伝導遅延を表しており、脱分極異常のマーカーとして報告されています1)。
fQRSは、瘢痕化した心筋の周りをジグザグに伝導することにより、QRS複合体の中に複数のスパイクが生じることによって引き起こされます2)。
様々な心疾患で認められますが、心筋梗塞では梗塞部位に一致してfQRSが出現します。
心筋梗塞の診断
心筋梗塞の診断において異常Q波以上の精度を持っていると報告されています。

fQRSはQ波よりも心筋梗塞の感度(85.6%)と陰性適中率(92.7%)は高いですが、Q波の特異度(99.2%)はfQRSの特異度(89%)よりも高いです。
Q波とfQRSを組み合わせることで、心筋梗塞の検出感度(91.4%)、特異度(89%)、陰性予測値(92.4%)は向上しました。
参考文献
2)Fragmented QRS: What Is The Meaning? Indian Pacing Electrophysiol J. 2012 Sep;12(5):213-25.