僧帽性P波(P mitrale)

僧帽性P波とは、左房拡大(左房負荷)に伴う心電図所見です。僧帽性P波は以下のように定義されます。
・Ⅰ、Ⅱ誘導でP波持続時間が120msec以上
・P波が二峰性で峰の間隔が40msec以上
・P波が二峰性で峰の間隔が40msec以上

僧帽性P波は昔から僧帽弁疾患に伴う変化として知られていたため、「僧帽性」と呼ばれています。例えば、僧帽弁狭窄症では左房に圧負荷、僧帽弁閉鎖不全症では左房に容量負荷がかかります。しかし、僧帽弁疾患に限らず、左房負荷をきたす様々な疾患で見られる所見です。

左房負荷によって左房が拡大すると、左房の興奮が遅れるためP波の持続時間が延長します。P波は前半が右房の興奮、後半が左房の興奮で成り立っているため、左房の興奮の頂点が後ろにずれることで2つの頂点を持つ二峰性P波(bifid P wave)となります。

僧帽性P波はⅠ誘導、Ⅱ誘導、V5誘導、V6誘導でよく見られます。Ⅰ誘導、V5誘導、V6誘導は側壁方向から心臓を見ている誘導であり、右(右房)から左(左房)方向への興奮をよく反映しているためと考えられます。

参考文献
1)ECG P wave abnormalities. Singapore Med J. 2013 Jan;54(1):4-7; quiz p.7.
書籍
心電図の読み方パーフェクトマニュアル P68-69
心電図判読ドリル P3-4