気胸(pneumothorax)
気胸は胸腔内に空気が存在することであり、部分的または完全な肺虚脱を引き起こします。気胸は、自然に起こることもあれば、外傷または医療行為が原因で起こることもあります。
気胸 - 05. 肺疾患 - MSDマニュアル プロフェッショナル版
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気胸の心電図
右気胸と左気胸の両方で心電図が変化することが以前から報告されています。
感度・特異度
最も感度が高い心電図所見は、V2、V3のS波高低下とT波陰転化(aVL誘導が最多)です1)。
表に示す17の心電図所見のうち7つが98%以上の特異度を示しますが、感度は低いです。
心電図変化のメカニズム
心電図変化のメカニズムは多くの研究で議論されており、諸説ありますが、心臓の変位(下方および後方)と長軸周りの(時計回りの)回転が、多くの心電図変化の原因であると考えられています2)。
phasic QRS voltage (electrical alternans)
少なくとも1つのリードで3mm以上のR波振幅の変動があることと定義されています。
Huangら2)は、気胸では肺実質の支持がないため、呼吸周期内で心臓が「揺れる」ためphasic QRS voltageが生じると仮定しています。
phasic QRS voltageは心嚢液貯留や心タンポナーデにも関連すると報告されています3)。
T波陰転化
T波逆転を引き起こすメカニズムは不明ですが、気胸が胸腔内圧の変化やカテコラミン作動性ストレスによる心筋内層の虚血を引き起こすことで変化が生じる可能性が指摘されています。
spiked helmet sign
心外膜の伸縮が「spiked helmet sign」を引き起こすという仮説が提唱されています4,5)。
左右差
左右で有意差のある気胸の心電図所見
・右気胸で多い:I誘導のP波陰転化
・左気胸で多い:肺性Pを伴うベースラインのシフト、V2のS <1.2 mV、V3のS <0.9 mV
・左気胸で多い:肺性Pを伴うベースラインのシフト、V2のS <1.2 mV、V3のS <0.9 mV
男女差
男女で有意差のある気胸の心電図所見
・男性で多い:不完全右脚ブロック
・女性で多い:肺性P波
・女性で多い:肺性P波
参考文献
3)Electrical alternans: a sign, not a diagnosis. South Med J. 2013 Aug;106(8):485-9.
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