S1S2S3 pattern

S1S2S3パターンはI誘導、Ⅱ誘導、Ⅲ誘導にS波が存在している状態を指します。S1はI誘導のS波、S2はⅡ誘導のS波、S3はⅢ誘導のS波を表しています。心室筋の最終的な興奮が右上方向に向かう場合、I、II、III誘導にS波が出現します2)。

心電図所見
S1S2S3パターンにはさまざまな定義があります1)。広義にはI・II・III誘導にS波が存在することを意味し、S波の大きさは問いません。狭義には各誘導でS波の振幅がR波より大きい(S波>R波)場合を意味します。
・I、II、III誘導のいずれか1つ以上でS波の振幅>R波の振幅
・I、II、III誘導のいずれか2つ以上でS波の振幅>R波の振幅
・I、II、III誘導の3つ全てでS波の振幅>R波の振幅
電気軸
I、II、III誘導の3つ全てで「S波の振幅>R波の振幅」となる場合は電気軸は北西軸となり、角度は-90°〜-150°の範囲内になります。また、I、II、III誘導の3つ全てで「S波の振幅=R波の振幅」となる場合は電気軸は測定できないので不定軸となります。

メカニズム
メカニズムに関しては諸説ありますが、QRS波の前半(R波)は通常の左室の興奮が優位、後半(S波)は右室の右上に向かう興奮が優位という右室の興奮が相対的に遅れることがS1S2S3パターンの本質とされています。主なメカニズムは軽度の心室内伝導異常であり、健常者のS1S2S3パターンも右室伝導遅延で半数以上が説明可能とされています2)。

右室伝導遅延
体表面マッピングや右室心内膜マッピングの研究では、右室流入路・流出路の活性化遅延(約30〜80ms程度)が確認されており、これが右上方向の興奮ベクトルを生じさせるとされています。 右室の基底部や流出路の興奮が正常範囲内ではあるけれどわずかに遅れることで、左室の興奮が終わった後に右室の遅れた興奮が優位になるイメージです。
右室肥大・拡大
右室の筋肉量が増えることで終末の興奮ベクトルが右上方へ強くなります。 特に肺高血圧、慢性肺疾患で右室圧負荷がかかると、右室の興奮の遅延が顕著になります。
位置・回転異常
やせ型、滴状心で心臓が胸腔内で垂直方向に位置し、時計方向回転することにより心室の脱分極の方向が全体として右寄りになり、興奮終末が右上方へ向かいます。
原因
S1S2S3パターンは、肺塞栓症、慢性閉塞性肺疾患、および先天性心疾患のある小児における右室肥大3)などと関連していると言われています4)。また、I、II、III誘導にS波が存在し、1つの誘導でS波振幅>R波振幅の場合は高血圧と関連があり、2つ以上の誘導でS波振幅>R波振幅の場合は心不全と関連があるとする報告もあります1)。しかしながら、健常人においても見られる所見であり、S1S2S3パターンのみでは病的意義は乏しく、他の所見との併存が重要とされています。
参考文献
1)The S1S2S3 electrocardiographic pattern – Prevalence and relation to cardiovascular and pulmonary diseases in the general population. J Electrocardiol. 2022 Jul-Aug;73:113-119.←S1S2S3-I型とS1S2S3-Ⅱ型のパターンに分けて比較
4)This Can Be as Easy as 1-2-3. JACC Case Rep. 2021 Sep 1;3(11):1382-1383.

