3枝ブロック(trifascicular block)
1968年、Rosenbaumらによって3枝ブロックの概念が報告されました1)。刺激伝導系はヒス束から右脚、左脚前枝、左脚後枝の3つに分かれていきますが、3枝ブロックはこのうちの2つの枝がブロックされており、残りの1枝が伝導障害をきたしている状態です。
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3枝ブロックの組み合わせとしては上図のように3通り考えられますが、臨床的には3枝ブロックは完全右脚ブロック+左脚前枝ブロック+左脚後枝伝導障害がほとんどです。その理由としては右脚>左脚前枝>左脚後枝の順番で障害を受けやすいからです。
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3枝すべてがブロックされると完全房室ブロックになるため、3枝ブロックはその一歩手前の状態と考えられます。3枝ブロックからの完全房室ブロックへ進行した場合、脚より下位の部分からしか補充調律が出ないため心拍数は遅く、非常に不安定であるため循環動体が破綻する危険性が高いです。
完全右脚ブロック+左脚前枝ブロック+左脚後枝伝導障害
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完全右脚ブロック+左脚前枝ブロック+左脚後枝伝導障害の3枝ブロックでは、右脚と左脚前枝がブロックされ、左脚後枝の伝導が障害されることで、伝導遅延により1度房室ブロックの波形になります。
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3枝ブロックにおける1度房室ブロック
3枝ブロックは波形のみで考えると房室結節が障害されていると誤解してしまいます。波形は1度房室ブロックですが、実際には房室結節が障害されているわけではありません。かろうじて最後の1枝が伝導遅延しながらも繋がっている状態です。
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参考文献
1)Hemiblocks revisited. Circulation. 2007 Mar 6;115(9):1154-63. ←ヘミブロックのレビュー
書籍
心電図マイスターによる3→1級を目指す鑑別力grade up演習 P110-112