ε波(εwave)
ε(イプシロン)波は主にV1~V3誘導においてQRS波の終了直後に出現するnotchです。しばしば低電位で細かく分裂してみられます2)。
J波に似ていますが,J波に比べてより高周波で低電位とされています。
不整脈原性右室心筋症(arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy;ARVC)に特異的な心電図所見とされ、ARVC患者の約30%に認められたとする報告がありますが、ε波は心室内の遅延伝導が原因とされており、ARVC以外の疾患では、心筋梗塞、肺高血圧症、サルコイドーシスでも認められることがあります。
ε波の命名
WPW症候群の典型的な波形がΔ(デルタ)波と命名されており、ギリシャ語のアルファベット順でδの次にあたるεを使い、ε(イプシロン)波と命名されました。
また、εは数学でも非常に小さな現象を表すのに使われることも理由の一つとしています6)。
参考文献
1)心電図 Vol. 38 No. 3 2018
4)Epsilon Wave in the 12-Lead Electrocardiogram: Is Its Frequency Underestimated? Rev Esp Cardiol (Engl Ed). 2016 Apr;69(4):438.←ローパスフィルタリングによりε波がマスクされることがありカットオフ周波数の調整が必要
5)Cardiac Sarcoidosis With Prominent Epsilon Waves: A Perfect Phenocopy of ARVC. JACC Case Rep. 2021 Jun 9;3(8):1097-1102. ←心臓サルコイドーシスは不整脈源性右室心筋症と臨床症状において重複しε波を認めることがある
6)Naming of the waves in the ECG, with a brief account of their genesis. Circulation. 1998 Nov 3;98(18):1937-42.←ε波だけでなく各波形の名前の由来について解説